読書感想 : 『世界を変えた10冊の本』

 

『世界を変えた10冊の本』 池上彰 文藝春秋 (2014/2/10)

池上さんによる本の解説本。

政治、経済、文化等々。世の森羅万象を解説するプロ、池上彰さんによる「本」の解説書。その「本」として取り上げられるのは、池上さんが考える「世界を変え」てしまうほどのインパクトを世に与えた以下の10冊です。

 

1.『アンネの日記』 アンネ・フランク

2.『聖書』 

3.『コーラン』 

4.『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 ウェーバー

5.『資本論』マルクス 

6.『イスラーム原理主義の「道しるべ」』クトゥブ 

7.『沈黙の春』カーソン 

8.『種の起源』 ダーウィン

9.『雇用、利子および貨幣の一般理論』 ケインズ

10.『資本主義と自由』フリードマン

 

新書サイズの大きさで10冊の本の解説ですから、それぞれの本の解説の紙幅は限られています。そのため本の内容に深く切り込むのが本書の目的ではありません。本の内容については概説的なこと以上のことが書かれているわけではありません。

 

それらの本が世界にどのような影響を与え、世界をどのように変えたのか。本書はこの点に主眼を置いて書かれています。

クトゥブの『道しるべ』の解説が勉強になりました。

私が特に勉強になったのは、『イスラーム原理主義の「道しるべ」』についての解説でした。私はこの本の存在を本書を読んで初めて知りました。

 

『道しるべ』はサイイド・クトゥブによって1964年に出版されました。彼は徹底したイスラム原点回帰を唱えることで、イスラムのあり方の根本的チェンジを訴えます。

 

現代はイスラムの理想が失われてしまったのに、イスラム教徒たちは、自分たちの世界を「イスラームの世界」などと思い込んでいる。これを正さなければならない、というのです。となれば、イスラム世界の腐敗した体制を打倒することは「神の道」であり、正義の戦いである、つまり「ジハード」(聖戦)なのだ、ということになります。

 

従来のイスラム世界では、異教徒の侵略に対して、イスラムの土地と教えを守るために戦うことがジハードであり、イスラム教徒同士が争ってはならないとされてきました。ところが、クトゥブの思想によれば、現代の腐敗したイスラム体制・イスラム社会と戦うこともジハードだというのです。

 

クトゥブによってイスラムの敵はイスラム世界の外だけでなく、中にもいることになったわけです。こうした考えが、オサマ・ビン・ラディンに代表されるイスラム原理主義思想の起源となり、現在に続くイスラム世界と西洋世界の、あるいはイスラム世界内の様々な紛争に繋がっているようです。

 

そして今や、イスラム世界西洋世界を問わず、全世界は対テロ臨戦モードが当然のようになっています。たかだか50年ほど前に出た本が世界を変えてしまったんですね。現代の世を騒がせる動きの背後にこんな本があったとは・・・ 

 

とりあえず『道しるべ』を読んでみようと思いました。

 

念のため言っておきますが、私はイスラム教徒ではありませんww

安定の池上解説。

安定の池上解説。池上さんの本はどれもそうですが、読めば間違いなく勉強になります。

 

本書を私はkindleセールで購入しました。kindleセールに池上さん本が出ていたら読んでおこう。改めてそう思いました。