読書感想 : 『観念論ってなに? オックスフォードより愛をこめて』

 

『観念論ってなに? オックスフォードより愛をこめて』 冨田 恭彦 講談社 (2004/11/19)

観念論の起源となった哲学者バークリの思想の解説書。

観念論という言葉を普段使うことはありません。耳にすることもまずありません。強いて使われる状況を考えると、「そんな考えは観念論に過ぎないよ」といったように、相手の考えを机上の空論として批判する文脈でしょうか。

 

そんななんとなくしかわからない”観念論”という言葉は、哲学的にはバークリという18世紀のイギリスの哲学者に根を持ち、以来現在に至るまで様々な哲学者によって議論されてきた歴史ある、由緒正しい言葉のようです。

 

本書は、観念論の歴史全体を射程に収めるのではなく、起源となったバークリの観念論に焦点を絞り、そもそも観念論ってどういうことなのか、という点を深掘りすることを目的とします。

 

バークリの観念論とは「物質否定論」です。要するに、”世界は自分の心の中にある観念に過ぎない。例えば、目の前の机は実在するように見えるが、実は自分の心の中にしか存在しない。”という考え方です。

 

とんでもない考え方のように思えますが、バークリがどうしてそうした考えに至ったのかを著者は懇切丁寧に説明します。バークリや哲学についての予備知識がなくても大丈夫。対話形式で書かれており議論が一つ一つ確認されながら進んで行くため、おいていかれることがありません。

 

本書を読んでいて、”世界は見えているように本当に存在しているのだろうか”とか、”世界は自分の想像の産物に過ぎないのではないのか”といった疑問がかつて頭をよぎったことを私は思い出しました。おそらく多くの方も一度はこんな素朴な疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。

 

バークリはいわば、そんな素朴な疑問に向き合い続けた哲学者です。素朴な疑問でもバークリのように徹底して考え抜くと、その疑問の先にはこうも好奇心をそそられる大きな世界がひらけてくるものなのか。あの手この手の議論を繰り出し”心の外に世界はない”との自説の説得にかかるバークリの思考力に圧倒されつつ、バークリの議論の展開にワクワクしながら、私は本書を読みました。