読書感想 : 『データブック 格差で読む日本経済』

 

『データブック 格差で読む日本経済』 みずほ総合研究所編 岩波書店 (2017/3/29)

本書は、日本の経済格差の現状を、データに基づき客観的に浮かび上がらせます。

老人の貧困を扱った本、子供の貧困を扱った本、シングルマザーの貧困を扱った本があります。そうした本を読んでいると、21世紀の日本ではないどこか違う国のことを書いた本なのではないかと思ってしまうほどの、厳しい現実を直視させられます。

 

世代間格差、教育格差を扱った本もあります。現代は身分制ではありません。にもかかわらず、生まれた時代、生まれた家庭といった自分では選べないものによって人生設計が規定されてしまう日本の現状を、そうした本は突きつけてきます。

 

かつて『ルポ貧困大国アメリカ』というアメリカの格差を扱った本を読んだときは、目を覆いたくなるようなアメリカの現実を前に、日本人で良かったと心底思ったものでした。ですが、現在、日本も格差社会であるということに異論を唱える人はそうはいないと思います(日本の相対的貧困率はOECD26ヶ国中3位)。”1億総中流”の共通認識は、もう完全に過去のものとなってしまいました。

 

本書は、格差のある一面にフォーカスして深掘りするのではなく、銀行系シンクタンクらしく、豊富なデータを駆使して、日本の格差の現状を全体として浮かび上がらせることを目的とします。その際著者は、イデオロギー的偏見を排し、”データに語らせる”ような徹底して客観的な姿勢をとります。扱う格差の種類は以下の通りで網羅的です。

 

所得の格差

資産の格差

正社員と非正社員の格差

雇用における男女の格差

年金の格差

世代間の格差

大都市と地方の格差

大企業と中小企業の格差

高齢者層の格差

高齢期の貧困

子供の貧困

 

データを示しながらなされる格差の説明はわかりやすく説得的です。そして様々な格差の現状を一冊にまとめてくれたおかげで、これまで関連テーマの書籍から得た格差がらみの知識の更新と関連付けができました。

 

本書は終盤で、格差を解決するための政策の提案をしています。

 

雇用に関する政策

賃金に関する政策

年金に関する政策

税制に関する政策

子供の貧困対策

教育に関する対策

地方創生に関する対策

成長力向上とパイの拡大

 

問題点が整理されており、向かうべき方向性がよくわかりました。ですが、提案される内容はいずれもすでにどこかで見聞きしたことのある政策の焼き直しでした。目新しさがないと著者を批判したいわけではありません。格差問題が顕在化してしばらくたつ今もってなお、問題は手つかずのままであり、格差の縮小へと社会が動き出していない現状に気付かされます。それと同時に、格差問題の深刻さ、解決の難しさを前にも増して強く痛感させられました。

 

格差社会は、現時点ですでに日本社会が抱える大きな問題だと思いますが、中長期的にはその深刻さを増していくとされます。問題の解決を図るには、まず問題の実相を知ることから。本書はその手始めとして、格好の一冊だと思います。

 

遠くない未来には、冒頭であげたような読んでいて暗くなるような本が書かれることのない社会になっていてほしいものです。