読書感想 : 『独裁国家・北朝鮮の実像 核・ミサイル・金正恩体制』

 

『独裁国家・北朝鮮の実像 核・ミサイル・金正恩体制』 坂井隆、 平岩俊司  朝日新聞出版 (2017/1/20)

本書は北朝鮮専門家二人の網羅的かつ高密度な対談本です。北朝鮮のまとまった知識が手に入ります。

ここ最近、北朝鮮に絡んだ穏やかならぬ報道に触れる機会が多くなってきています。アメリカがいうことを聞かない北朝鮮の政権転覆を図り、攻撃を開始するのではないかとの憶測が飛び交い、各メディアでまことしやかに論じられています。私としては、戦争ではなく外交交渉で穏便に事態が収束してくれるの祈るばかりです。

 

ところで、そもそも、北朝鮮のような小国どうしてアメリカという超大国に歯向い続けるのでしょうか。大国日本ですら、アメリカ追従を国是としているというのにw

 

こんな素朴な疑問が頭をもたげてきたので、これを機に北朝鮮に関する本を一冊読んでみようと思い、手に取ったのが本書です。

 

本書は、北朝鮮の専門家二人の対談形式を取り、二人それぞれが互いに疑問をぶつけ合いながら議論を深め、北朝鮮の実像を浮き彫りにしていくというスタイルの本です。

 

著者は、朝鮮戦争あたりからの歴史的経緯を踏まえつつ、核問題、米中露韓日との外交問題、国内の社会事情、経済事情、世襲独裁という政治体制といった様々なテーマについて、北朝鮮におもねるのでもなく、かといっていたずらに批判的に向き合うのでもなく、客観的で冷静な視点から、分析を加えていきます。

 

分析は微に入り細にわたり、その上本書は結構なボリュームがあるので、北朝鮮についてのかなりまとまった知識を手にすることができました。もうお腹いっぱいですw

 

私たちから見たら無茶苦茶な北朝鮮ではありますが、北朝鮮には北朝鮮なりの論理があり、その論理に従って国家として戦略を立てており、やりたい放題に見える金政権も、権力を確保し続けるためにただ血統の上に胡座をかいているのではなく、時宜に応じて制度に微調整を加えている。北朝鮮という国家も金政権も、生きるか死ぬかの権力闘争の最前線で闘っている(そして実際に存続し続けている)のですから、こんなことは当たり前のことなのかもしれません。ですが、本書を読んで、私はそんな当たり前のことにも気づかせてもらえました。

 

本書は本編だけでなく、「巻末資料」も充実しています。面白いのが「朝鮮労働党は、偉大な金日成・金正日主義の党である。」にはじまる「朝鮮労働党規約」です。人間の神格化の怖さとある種の滑稽さを味わうことができます。

 

今後北朝鮮はどこに向かうのでしょうか。本書を読んでもその答えはありません。ですが、北朝鮮の今後を見ていく上での一つの視座を手にするのに、本書はとても役に立つものだと思います。