読書感想 : 『ソープランドでボーイをしていました』

 

『ソープランドでボーイをしていました』 玉井 次郎 彩図社 (2014/5/22)

本書はソープランドの裏側を描いた優れたノンフィクションです。

本書は、東日本大震災により職を失い吉原のソープランドのボーイとなった著者が、実体験を綴った本です。

 

まさに過酷な現場です。一癖も二癖もある同僚、厳しい上下関係、労働基準法無視同然の長時間の重労働、上下関係を持ち込まれた共同部屋での気が休まらない住み込み生活。私だったら一日も耐えられなさそう。そんな現場のリアルを著者は生々しく、それでいながら暗い印象を全く残さない軽やかな筆致で描いていきます。

 

読みやすい、おもしろい。私は一気に読みました。なかなか知ることのできない世界を垣間見せてもらいました。風俗に行ったことのない私でも楽しめましたが、行ったことのある人ならよりしみじみと感じるところがあるのではないでしょうか。本書は優れたノンフィクションだと思います。

日常が幸せの基盤です。

著者は妻子を福島に残し、出稼ぎの形でソープランドで働き始める。そして、職場がソープランドであることを妻子に伝えることなく、家族を思い必死で働きお金だけを送り続ける。本書を通して滲み出てくるのは、著者の誠実な仕事ぶりと、家族への愛情です。というより、家族への愛情と、それに支えられた誠実な仕事ぶりといった方が正確かもしれません。

 

著者にとってボーイとしての生活は、再び家族との生活を手にするまでの、いつ終わるとも知れない我慢以外のなにものでもありませんでした。著者は最終的には地元に仕事を得て家族との生活を再開し、震災前とは違った形ではありますが、日常を取り戻します。ハッピーエンドに私はホッとしました。

 

ありきたりの感想になってしまい恐縮ですが、本書は、仕事があり家族と一緒に生活できる、そんな日常がくれる幸せの貴さを噛み締めさせてくれます。