読書感想 : 『総理』

 

『総理』 山口敬之 幻冬舎 (2016/6/8)

政権中枢に肉薄。迫真のドキュメント。

元TBSの政治記者による、現政権中枢の舞台裏を伝えるドキュメント。

 

読んでびっくりしました。記者とはここまで政治家に近づけるものなのでしょうか。著者は政権中枢の政治家から絶大なる信頼を得ており、彼らと日常的にお酒を酌み交わし、要所要所では政治のプレーヤーとして振る舞います。著者の前で安倍総理は演説の予行練習をしたり、著者が安倍総理、麻生財務大臣を結ぶメッセンジャーとして動き、消費税引き上げ等の政治的決定に絡んだり。 

 

ジャーナリズムの仕事は、一義的には権力の監視、批判とされます。よって、ここまで記者が権力側に寄り添ってしまってよいのだろうか、本書はジャーナリズムではなくプロパガンダに類するものではないのか、と著者に批判的な立場をとることも可能です。私も読んでいて途中まではそのように思っていました。ですが、最後まで読んだとき、その考えは変わっていました。

 

政権中枢の政治家のリアルな人間模様の描写は臨場感たっぷり。政治の奥深さも伝わってくる。面白い。本書は、著者のように政治家に近づいた書き手がいなければ、まず私たちに知らされることはない情報でいっぱいです。知ることのなかった政治の一面を知れたことで、政治、そして政治家というものを見る新しい視点をもらえました。

 

今私は、たとえ権力側に寄り添うかたちになるとしても、本書のような仕事、つまり、政治家に肉薄して外からではなかなか窺うことのできない政治の裏側をつまびらかにし、政治について考える材料を読者に提供する仕事も、ジャーナリズムの仕事としてありなのではないかと思うようになっています。

 

内容が面白いだけではなく、ジャーナリズムとは何かということを考えさせてくれる本。