読書感想: 『コンビニ店長の残酷日記』

 

『コンビニ店長の残酷日記』 三宮貞雄 小学館(2016/4/6)

コンビニの店舗経営は、本部による搾取の上に成り立っています。

利用したことのない人はいないのではないかと思えるほど私たちの生活に根付き、様々な便利なサービスを24時間提供し続けてくれるコンビニ。コンビニは今や社会インフラとなっています。

 

本書は、そんなコンビニの裏側を現役のコンビニオーナー店長である著者がありのままに語り、外側からではなかなか知ることのできないコンビニの「残酷」な実態を世に周知することを目的とします。

 

私は読みながらびっくりしました。そして辛くなってきました。その残酷さは私の想像以上でした。

 

残酷さを産む原因は大きく分けて三つです。一つは独特の営業形態。もう一つは理不尽な客。そして最後は理不尽なコンビニ本部です。

 

一つ目については、例えば、24時間営業を維持するため4日間寝ないで勤務、1泊旅行をする時間も取れないというような話が紹介されます。二つ目の理不尽な客については、店員を召使のように扱う横柄きわまりないな客や、コンビニの迷惑を顧みない傍若無人な客が多数紹介されます。中にはテレビをコンビニのゴミ箱に捨てていくような強者もいるようです。

 

これら二点だけでももう十分にコンビニ経営の残酷さが伝わってくるのですが、これらは序の口です。もっともやっかいなのはコンビニ本部の理不尽さです。これについて語られるあたりが、本書のポイントでしょう。著者は自身の体験を丁寧に追いながら、コンビニ本部と店舗との関係を詳細に、あくまでも冷静に書き綴っていきます。

 

とても勉強になるので本部の理不尽さの詳細についてはぜひ本書を読んで欲しいのですが、概略はこうです。

 

ノウハウはすべて本部頼み、契約更新についても本部の胸先三寸といった圧倒的に優位な立場を背景に、本部は各店舗に過剰なノルマなど無理難題を迫ります。各店舗は建前上は独立した経営主体ですが、実質的には本部の強い制約のもとに経営せざるを得ません。それだけではありません。そもそもの会計システムが、各店舗が儲かろうが儲かるまいが本部は儲かるようなものになっています。また、本部は各店舗のすぐそばにでも平気で新店舗を作ります。全体のパイが大きくなれば、各店舗の売り上げがどうなろうが本部にとっては関係ないのです。

 

本部は各店舗を搾取の対象としかみていないようです。搾取を織り込んだビジネスモデルによってコンビニが成り立っていることがよくわかります。

 

ここ1年ほどの間に、コンビニが建て替えられるケースを私の住む筑西市内で2つほど目にしました。壊しているときはコンビニをやめるのかと思っていましたが、程なくして同じ場所に同じ建物が建ち、以前と変わらず営業を再開しました。なぜ建て替えたのか私は不思議でした。新しくできたコンビニを見る限り、外見も中身も以前との違いが私にはわからなかったので。駐車場の大きさも変わっていませんでしたし。

 

本書を読んだいまでは、本部からの圧力で(一般利用者にとっては旧式と違いのわからないような)”最新式”のコンビニに建て替えさせられたのではないかと勘繰りたくなってきます。おそらくは本部指定の業者を使わされて、本部にマージンがいくという仕組みなのではないでしょうか。

 

さて、コンビニが次から次へとできる現状を見る限り、コンビニの店舗経営を始める人は後を絶たないようです。つまりコンビニの店舗経営の仕事には魅力があるわけです。ですので、コンビニのビジネスモデルを一方的に断罪することはできません。

 

ですが本書を読む限り、コンビニの裏側にはそこで働く人々の苦労、というよりコンビニ本部によるそこで働く人々の搾取があるのはたしかです。実際、アメリカで日本式のコンビニビジネスモデルを採用したところ、店舗側の反発が強まり、本部側との間でのトラブルが頻発してるようです。

 

コンビニのビジネスモデルが健全であるとは思えません。不健全なインフラに支えられている社会が健全であるとも思えません。

 

本書の内容が周知されることを、そして本書が、本部による各店舗の搾取を内包する現在のビジネスモデルの変更を促すきっかけとなることを祈るばかりです。