映画感想 : 『東京原発』

 

『東京原発』 監督: 山川元 GPミュージアムソフト(2004/09/25)

本作は、原発問題を扱った社会派コメディです。

本作は、原発の問題を面白おかしく、そしてまじめに痛烈に批判した社会派コメディです。

 

東京都知事が東京原発誘致案を都の幹部相手にブチあげるところから物語はスタートします。そして、知事と都の幹部たちがその提案についてなんやかんやと議論する会議室のシーンが全体の8割を占めます。

 

この会議のやりとりがおもしろい。同じシーンが延々続くからといって、間延びしたところはまったくありません。主役の役所さんをはじめ都の幹部を演じる役者さんの好演もあり、小気味良くコミカルに進む会議の展開を楽しんでいるうちに、いつのまにかラストのクライマックスに突入になっていた。私はそんな印象です。

 

本作には原発がらみの情報量がびっしり詰め込まれています。それらを理解するのは簡単ではないと思います。この辺りが本作を楽しめるかどうかの分かれ道になるかもしれません。ですが、安心してください。不幸にも3.11を経て原発の危険性を体感し、原発の基礎的リテラシーを身につけてしまった私たちにとっては、苦もなく理解できるレベルのものです。

 

本作は、コメディとして楽しみながら、社会的な問題意識を提供してもらえる、上質なエンターテイメント作品です。

主張が旗幟鮮明で面白い。低予算でも面白い。

さて、本作の主張は、はっきりと原発反対です。その色を隠そうともしません。主張のぜひはさておき、社会派の作品であるなら、下手に中立的な映画を作ろうとするよりも、本作ぐらい主張を旗幟鮮明にしてくれたほうが面白い作品になるのではないかと痛感させられました。(マイケル・ムーアの作品群を思い出しました。)

 

また、先ほどほとんどが会議室のシーンといったように、本作は低予算の映画であるのが一目でわかる作りです。それにもかかわらず、骨太のエンターテイメント作品に仕上がっています。映画のおもしろさと予算規模はそれほど関係ないのではないかと考えさせられる作品でもありました。(クリント・イーストウッドの『グラントリノ』を思い出しました。)

社会は変わらない、変われない。

本作は2004年の作品です。つまり3.11以前の作品です。

 

その時期にすでに、ここまではっきりと原発の危険性を告発するエンターテイメント作品があったことが驚きです。まるで3.11を予言しているかのような内容ですので。

 

原発の危険が認識されれば脱原発の方向へと社会は進むはず。ネタバレになるので詳細は書きませんが、本作はそうした希望をもって創られた作品です。

 

ですが、本作封切り後に、その方向へと社会が動くことはなかった。まあ、映画一本で社会が動くことはなかなかないでしょう。

 

ですが、3.11で原発の危険性を肌身で感じた今もなお、私たちは原発を推進する社会を生き続けています。

 

本作に仮託された希望はものの見事に裏切られ続けています。

 

社会は変わらない、変われない。そんな現実を改めて実感させられた作品でもあります。