読書感想 : 『ファストファッションはなぜ安い?』

 

『ファストファッションはなぜ安い?』 伊藤和子 コモンズ (2016/4/23)

ファストファッション愛好者にとっては耳が痛い本です。

私はファッションに興味がありません。服はなんでもよいと思っています。

 

だから服にお金はかけたくない。服を選んで買う時間と手間も面倒だ。かといって、ダサいとも思われたくはないw

 

そんな私のわがままな悩みを解決してくれるのがユニクロです。ユニクロは安い。値段のわりに作りもしっかりしているので長持ちする。インナーからアウターまですべてが揃うのでワンストップでOK。私はオンラインショップで買っているので、時間も手間もかからない。ユニクロを着ておけばダサいということにもならない(はず)w 

 

私はユニクロ愛好者です。身につけているものの8〜9割がユニクロ製品のときもあります。

 

さて、本書は、ユニクロに代表されるファストファッションの製品が製造される過酷すぎる現場を明らかにすることで、ファストファッションを受け入れ、それをよしとする社会に掣肘を加えることを目的とします。

 

私のようなファストファッション愛好者にとっては、とにかく耳が痛い話を浴びせられ続けることになります。

ファストファッションは労働者の搾取の上に成り立っています。

ファストファッションは安い。著者はファストファッションを、恐らくは皮肉を込めて、チープファッションと呼んでいます。ではその安さの理由はというと、それはどうやら人件費をギリギリにまで切り詰めていることにあるようです。

 

人件費を削るため、ファストファッションの各ブランドは、人件費の安い途上国の工場に製造を委託します。そして途上国の工場は、労働者の権利を全く無視した過酷な労働を労働者に強いて、ギリギリにまで人件費を抑えようとします。

 

ファストファッション製造に携わる工場労働者の惨状は、読んでいて目を覆いたくなるほどです。日本のブラック企業も裸足で逃げるのではないでしょうか。極端に安い給料、長すぎる時間外労働時間、極めて危険で劣悪な労働環境、労働組合の不在。労働法規が無視されています。そうした状態を取り締まり労働者を救済するべき行政側もまったく機能していません。そしてファストファッションの各ブランドは、社会的責任を全うすることをポリシーとして高らかに謳いながら、その実、そうした状態を知らぬふりを決め込むのが常態化しているようです。

 

私が好んで身につけているファストファッション製品は、途上国の工場で働く人々の搾取の上に成り立っているわけです。私はこの記事をいまユニクロの長袖Tシャツを身につけながら書いています。この長袖Tシャツも、途上国のどこかで働いている彼(女)らの苦しみから作り出されているのです。

 

本書には苦しみに耐え続ける労働者の写真が載せられています。彼(女)らは一様に、絶望の海を漂っているような沈んだ表情をしています。今後ユニクロ製品を身につけるにつけ、そんな表情を思い出さずにはいられなくなりそうです。 

労働者の惨状を変える力があるのは消費者です。

著者はヒューマンライツ・ナウという国際人権NGOのメンバーです。著者たちは途上国の労働者の惨状の改善を目指して、具体的にはファストファッションの各ブランドや各国政府に対して働きかけをしています。

 

ですが、著者はそうした惨状を変えるには、結局のところ、私たち消費者が変わらなければならいと主張します。つまり、私たち消費者がファストファッションのブランド製品の裏側で起きている惨状を認識し、ファストファッションをよしとするこれまでの購買行動を改めていくことが、各ブランドの行動の変革につながり、ひいては労働環境の改善にもつながっていくということです。

 

私もその通りだと思います。

 

資本主義社会で一番偉いのは消費者です。各企業が安売りをするのも、また安売りができるように労働者を低賃金でこき使おうとするのも、すべては消費者を惹きつけるためです。そして、消費行動とは投票行動と同じです。例えば、ユニクロ製品を買う(消費する)なら、それは望むと望まざるとにかかわらず、ユニクロを市場に残そうという意思表示をしているのと同じです。他社ではなくユニクロを支持しているということです。

 

消費者が変わらなければ、企業も社会も変わりません。途上国の工場で苦しむ人々を救うためには、迂遠なようですが、そして容易にできることではありませんが、私たち消費者がファストファッションを選択しないという選択をすることがもっとも効果的なのです。

ファストファッション愛好者にこそ読んでほしい一冊です。

繰り返しになりますが、私はユニクロ愛好者です。ですが、本書を読んでしまった以上、今後ものんきにユニクロ愛好者としてやっていくことはできません。それは途上国の労働者の搾取に加担することになるからです。

 

何も考えずにユニクロを使い続けたかった・・・ 本書によって私は不都合な真実を突きつけられた思いです。ですがそれは受け止めなくてはならない真実だと思います。

 

とくにファストファッション愛好者にこそ読んでほしい一冊です。