読書感想 : 『朱子学と陽明学』

 

 『朱子学と陽明学』 小島毅 筑摩書房 (2009/1/10)

朱子学と陽明学の優れた入門書です。

本書は朱子学、陽明学について流布している旧来の俗説の誤りや理解の浅さを指摘し、「厳密な意味で学術的に」そうした思想と向き合うことで朱子学、陽明学の実像を読者に提供することを目的とします。

 

そのために本書は、朱子学、陽明学が生まれる歴史的思想的背景にはじまり、朱子学の創始者朱熹、陽明学の創始者王守仁(陽明)の生涯と思想、その後の朱子学、陽明学の思想的展開、日本を含めた東アジアへの思想的影響まで、朱子学、陽明学を巡るトピックを網羅的に取り上げます。盛りだくさんの内容が、執筆当時の最新の知見に拠りつつコンパクトにまとめられています。

 

さて、私は朱子学、陽明学というと、歴史や倫理の教科書に書かれていることぐらいしか思いつきません。朱子学は「性即理」で陽明学は「心即理」とされていたなあっと。つまり私はこれまで朱子学にも陽明学にも関心がなかった。基礎知識もありませんでした。ですが私は、抽象的な内容の本書を飽きることなく一気に読めました。理由は二つです。

 

まず、著者は常に朱子学と陽明学を対比させながら話を進めます。そのため、読み進める途中で何度も両者の違いを確認することができます。これは助かりました。おかげで頭が整理された状態で最後まで読ませてもらえました。

 

そしてなにより、俗説の誤りや理解の浅さを指摘したうえで提案される、著者の解釈が説得的です。学術的に丁寧に一つ一つ根拠を挙げながら著者は解釈を展開します。俗説に包まれステレオタイプな表面的理解をされてきた朱子学と陽明学。それらが、著者の解釈により本来の深みとともに姿をあらわしてきます。私は”違いのわかる大人”になったような満足感を深めながら読み進めることができました。

 

コンパクト。わかりやすい。そして内容がしっかりしていておもしろい。本書は朱子学、陽明学への優れた入門書です。ちなみに、先ほど挙げた”朱子学=性即理”、”陽明学=心即理”という教科書的理解も、著者は俗説にすぎないとしメスを入れています!朱子学、陽明学に関心のある方にとっては必読だと思います。

 

最後に蛇足ながら、私はAmazonのKindle日替わりセールで本書を知りました。思いがけず朱子学、陽明学に触れることができ、実りある時間を持つことができました。ありがとうAmazon!